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サイトをオープンしました。

この度、弊社のWEBサイトをオープン致しました。
今後はこちらのWEBサイトを通じて、弊社製品情報だけでなく低酸素応答機構に関する様々な情報を発信してまいります。
テトラクリエイト株式会社をどうぞ宜しくお願い致します。

2023年09月12日

論文が掲載されました。

既存薬とは構造が異なる新奇HIF活性化剤の開発



普段の生活で 低酸素 を感じることってある? 
 私たちは、誰もが母親の子宮から切り離されて、生まれると同時に、大気の酸素を呼吸によって取り入れた生活を送っています。普段の生活で、私たちが、酸素の不足を感じることはなく、手指、臓器の隅々まで赤血球が血管を通って過不足なく酸素を運んでいます。ただ、時に血管の詰まり(血栓と言いますが)が生じると、その先へ十分な酸素を送り届けることができなくなり、低酸素に陥ります。大抵の血栓は速やかに解消されていますが、繰り返して血栓ができるようなことになりますと、慢性的な炎症が生じて、臓器へダメージを与えることとなります。また、急性期のものであれば、心不全や脳溢血などとても予後が悪く、私たちのQOLを大幅に低下させるような病気の発症に直結します。これらのようなメカニズムで生じる疾患は、虚血性疾患と総称されています。

 ノーベル賞によって注目される低酸素を感知する分子メカニズム  
 虚血性疾患の予防や治療をする目的で、低酸素状態に抵抗性を与えるような方策の開発が進められてきました。特に、ケーリン、セメンザ、ラットクリフ博士らが2019年にノーベル医学生理学賞を受賞した、「細胞がどのようにして酸素濃度を感知し、それに応答するかという仕組みの発見」で有名になった低酸素誘導因子(HIF)を活用する方策が採られてきました。このHIFは体や細胞を低酸素にしないと発動しないのですが、低酸素にせずとも、低酸素状態に対して抵抗性を付与できる低分子化合物(少しややこしいですが)の開発が精力的に進められてきました。

 低酸素状態に抵抗性を付与できる化合物  
 低酸素状態を感知して、防御機構を発動する分子メカニズムに関する基礎研究が盛んに実施されると同時に、多くのHIF活性化剤が創出されてきました。弊社の技術顧問である川口と辻田は東北大学大学院医学系研究科在籍時に、高感度にHIFの活性化状態を可視化できるモニター細胞を作り出し、本邦の公的化合物ライブラリーから多くのHIF活性化剤を見出しました。化合物の構造を精査すると、そのほとんどがHIFの分解に関与するプロリル水酸化酵素(PHD)の補因子である2-オキソグルタル酸(2-OG)の構造を保持していました。見出したヒット化合物のほとんどがすでに発表されているHIF活性化剤に類似したものでしたが、その中に、2-OG骨格を保持しない5-(1-acetyl-5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (PyrzA) があることを見出しました。
 PyrzAは化合物としてライブラリに収蔵されていたものの、その合成方法についても報告がなく、川口らの研究室で時間をかけて、あらたに合成方法を確立し、安定的にPyrzAを合成することができるようになりました。再合成したPyrzAは培養細胞およびマウス個体において、著明な毒性を示さず、HIFを安定化できることを確認しました。PyrzAの作用点がどこにあるのか確認するために、HIFタンパク質の水酸化修飾に関わるPHDタンパク質とコンピュター上でドッキングシミュレーションを行ったところ、PHDタンパク質の活性中心入り込まず、活性中心の上に蓋をするような形でPHDによるHIFの水酸化を阻害することが判明しました。現在は、実際、PHDタンパク質を大量に精製してPyrzAの作用点を確定しようとしております。このように、PyrzAはこれまでの化合物とは異なる作用で、HIFを活性化するのではないかと想定しています。



参考
受賞者
• ウィリアム・ケーリン(アメリカ,William G. Kaelin Jr,ハーバード大学)
• グレッグ・セメンザ(アメリカ,Gregg L. Semenza,ジョンズ・ホプキンズ大学)
• ピーター・ラトクリフ(イギリス,Sir Peter J. Ratcliffe,オックスフォード大学)
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2019/summary/


詳細は、リンクからご覧ください。

2022年04月13日